あの夜を閉じ込めて
「では、ここから好きな色を選んでください」
これから行うのは吹きガラス体験。溶けたガラスに息を吹き込んで形にする方法で、作業時間は二十分くらいだそうだ。
銀色のトレーに入れられたカラフルな粒子。そこには十五色が用意されていた。
「スカイブルーも素敵ですね。でもイエローもいいな。うーん、迷っちゃいますね……」
優柔不断な性格が出てしまって、なかなか決められない。すると、見かねた冬夜さんがなぜか誕生月を聞いてきた。
「誕生月ですか? 実は誕生日は今月なんです」
「そうなんですね。おめでとうございます。2月なら誕生石はアメジストですし、このバイオレットはどうですか?」
「わっ、綺麗です!」
「せっかくなら、バースデーグラスを作りましょうか。誕生石の色をもとにデザインされたグラスなんです。けっこう女性の方に人気があるんです」
「じゃあ、それでお願いします」
私は軍手をはめて、ベニヤ板で区切られているスペースに入った。そこには腰掛けがあって、冬夜さんから座るように指示された。その間に彼はオレンジの釜の側でなにかの作業をしている。
「その釜の中に入ってるのって、溶けたガラスですか?」
「はい。坩堝って言います。温度は約1300℃。一度でも冷ましてしまうと、中のガラスが固まって坩堝が使えなくなってしまうので、一年中火は焚きっぱなしにしています」
「す、すごいですね」
私の知らなかった世界。でも冬夜さんはきっと毎日ここにいて、ガラスを作っている。それを想像したら、とても不思議な気持ちになった。
彼は慣れたように坩堝からドロドロのガラスを巻き取った。それが長い吹き竿の先端に付いていて、これから私が息を吹き込んで、ガラスを膨らまさないといけないのだけれど……。