先輩からの卒業



「本当に加恋じゃないのか?」


「だから知らないって。別の誰かじゃないの?」


加恋じゃないとすれば、思い当たる相手は1人しかいなかった。


チョコをくれたのは多分……奈子だ。


あの日、俺は奈子と悟と一緒に勉強していた。


奈子は自分が課題を教えてもらうために引き留めたせいだと言っていたが、それはもしかしてチョコを渡すため?


だから、あれ程までに罪悪感を感じているのだろうか。


それに、奈子がバレンタインにチョコを作らなくなった理由ももしかして……。


事故当時、曖昧だった記憶が徐々に蘇ってくる。

どうして俺は今までそんな大事なことを忘れていたんだろう。



「多分、巧が好きだった子からじゃないの?電話でもやっぱりもう付き合えないって言われたし」

「電話?」

俺達は頻繁に別れ話を繰り返したが、そういう時はいつも必ず面と向かって話をしていた。


電話でなんて……。


「もしかしてそれも覚えてないの?巧が事故にあった日よ」





その後、俺は衝撃的な話を加恋から聞くことになる。


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