先輩からの卒業
知らなかった、加恋先輩との交際にそんな経緯があったなんて。
先輩の気持ちになんて、これっぽっちも気がつかなかった。
「だけど、無理だった。加恋と付き合い始めてからも俺の心の中は奈子でいっぱで……。だから、すぐ謝って別れようとしたんだ。でも、加恋からは別れたくないって言われてそっから話は平行線のまま進まなかった」
先輩は「勝手だよな」そう言って苦笑する。
その言葉に私はなんと返事を返したら良いのかわからなかった。
「本当は加恋と別れた後、奈子に好きだって言うつもりだった。けど、あの事故があったから……。奈子は責任を感じて俺と付き合うんじゃないかと思ったら言い出せなかった。もう一生言えないなって」
先輩が事故に遭った後、私も同じことを考えた。
もうこの想いは、一生伝えることができないと。
先輩も同じように気持ちを消そうとしていた事実に胸が苦しくなる。
私達はこの2年、いやもっと前から遠すぎる回り道をしていたようだ。
「奈子と同級生になってこれからは友達として側にいられればいい。そう思うようにした。それから、俺と違って浪川なら奈子を笑顔にできるって……。それなのに諦め悪くてごめん」