◇水嶺のフィラメント◇
「メー! 無事か!?」

 一瞬の静寂を打ち破ったのは、メティアにとって聞きなれた青年の声であった。

 その声に後ろを振り返り、ツカツカと歩み寄る。

 黄緑がかった尖った頭を一発ゴツンと殴りつけ、メティアは腰の両側に手を当てた。

「コラ、リーフ! あたいを一番に心配すんなっ!!」

「何だよ~心配してやってるのに、何で怒られなきゃいけないんだよ~!」

 メティアに襲いかかった剣を撃ち抜いたのは、ようやく秘密の入口を見つけて駆けつけたリーフの弾丸だった。

 叩かれた前頭部をさすりながら言い返すも、「想い人」の無事な様子にリーフもさすがに嬉しそうだ。

「ご無事で良かった……アンさま、レインさま! それにもちろん、メーもだよ!」

 そしてリーフの後ろから聞こえた明るい声が、全員の瞳をパッと見開かせる!

「パニっ!! 生きてたのか!?」

 先程のリーフとは打って変わり、メティアは喜びの声を上げ、両腕を掲げて少年の元へ走り寄った。

 メティアのマントはアンをくるんでいるため、強く抱き締められたパニの顔は、上半分を露出した豊満な胸の谷間に押し付けられている。

 背後では指を(くわ)えたリーフが羨ましそうな表情で唖然としているが、当のパニも「どうして今日は何度も生死を問われるの?」とフォルテに驚かれたあの時を懐かしそうに思い出した。

「パニ……」

 パニから遠く真正面のイシュケルも、心から安堵したようにその名を呟く──しかし。


< 170 / 217 >

この作品をシェア

pagetop