◇水嶺のフィラメント◇
「ありがとう、アンシェルヌ。これからは私も両王家に協力しよう」
そしてスウルムの呼ぶ自分の名がこれほど心震わせるのは、彼がその名の意味を知るからこそに違いなかった。
母の愛情が込められた名前は、アンの奥底に刻まれた生まれる前の記憶にまで、強い力をもって浸透した。
「ありがとうございます、叔父さま」
スウルムが頭を下げた向こう側で、イシュケルも深く腰を折っていた。
「イシュケルも本当にありがとう」
* * *
「じゃあね、アン! ちゃんと帰ってこなくちゃ承知しないからね!」
「もちろんよ、メティア! ちゃんと待っててちょうだい!」
白い岸辺で見送るアンに、一行は手を振りながら倒れた鉄格子の上を歩き出した。
依然立つ格子に挟まれた真中で立ち止まり、全員が水面に額を浸けてレインを偲ぶ。
やがて彼らの影が向こう岸からも消え去って──
一人きりとなったアンは、今一度心の中で決意した。
──待っててレイン、あたしは貴方を決して独りにはしない──
そしてスウルムの呼ぶ自分の名がこれほど心震わせるのは、彼がその名の意味を知るからこそに違いなかった。
母の愛情が込められた名前は、アンの奥底に刻まれた生まれる前の記憶にまで、強い力をもって浸透した。
「ありがとうございます、叔父さま」
スウルムが頭を下げた向こう側で、イシュケルも深く腰を折っていた。
「イシュケルも本当にありがとう」
* * *
「じゃあね、アン! ちゃんと帰ってこなくちゃ承知しないからね!」
「もちろんよ、メティア! ちゃんと待っててちょうだい!」
白い岸辺で見送るアンに、一行は手を振りながら倒れた鉄格子の上を歩き出した。
依然立つ格子に挟まれた真中で立ち止まり、全員が水面に額を浸けてレインを偲ぶ。
やがて彼らの影が向こう岸からも消え去って──
一人きりとなったアンは、今一度心の中で決意した。
──待っててレイン、あたしは貴方を決して独りにはしない──