◇水嶺のフィラメント◇
「どうしてこうも王族のお方々ってのは、常に冷静沈着を装うのかしらね? お姫サマがそんな調子だから、レインも退屈したんじゃないのぉ? あたいを抱く時のレインは、いつもの粛々とした王子サマには見えないほど情熱的だったわよ。まぁどうせお姫サマとは、「夜のお楽しみは婚姻の後に~」なんてお約束なんだろうけどね! あーヤダヤダ」

「メー、もうやめてよ!」

「うっさい! 声変わりもしてないガキが、大人のケンカに口ツッコむなっての! どうせあっちの毛もまだ生えてないんだろ!?」

 せっかくパニが止めに入ったものの、メーの勢いは留まる様子もない。

 挙句(あげく)の果てには口撃の対象を一人増やしてしまう始末だ。

「メーの意地悪! そ、それくらいはボクだって……」

「へぇ~?」

「ふ、ふふ」

「……へ?」

 押され気味のパニと形勢有利なメーの間を、唐突に流れてきたのは小さな笑い声だった。

 二人はいざこざも忘れて気の抜けた声を上げてしまった。


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