◇水嶺のフィラメント◇
「なぁ……この川って王宮に続いてるんだよな? 段々街明かりから離れちまってる気がするんだけど……」

 メティアの背後──下ってきた方角には、家々の照明や街灯が遠く(かす)んでいるが、アンの背後──黒々とした流れの先は、何も見通せない闇であった。

 川幅も徐々に広がり、華やかな王宮が近付いているとは思えぬ雰囲気だ。

「王宮は水車小屋よりも川上よ。あたしたちが向かっているのは東部の湖畔。其処に秘密の入口があるの。随分前にレインに教えてもらったきりだから、今もあるとは限らないけれど……」

 堅強に守られた王宮を正面突破出来るなど、アンもハナから考えてはいない。

 唯一レインとアンだけが知るあの入口に、運命を賭けることしか思いつけなかった。

「秘密の入口って、王宮へのか?」

「そう……それは二手に分かれていて、片方は王宮へ、もう一方はナフィルの国境へ向いているの。その境界であたしはレインと出逢った」

「わぉ! 随分とロマンチックな話じゃないか」

 珍しくメティアが食いついたこともあり、アンは微かにはにかみながら、レインとの出逢いを切り出した──。


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