元勇者は彼女を寵愛する
「ありがとう、リーチェ。君に出会えて、本当に僕は救われたんだよ」
「え?何を言ってるの?救われたのは私の方だけど……っていうか、ヴァイスがみんなを救ったんでしょ?」
「違うよ。僕を救ったのも、この世界を救ったのも全部、本当は君だったんだ」

 リーチェは動きを止め、僕の顔を見つめながらウルウルと瞳を潤ませた。

「ヴァイス……かわいそうに。きっと大事な物を無くしちゃったショックで、混乱しちゃってるのね。待ってて、今私が慰めてあげるから!!」

 そう言ってリーチェは湯浴み場へと駆け出して行った。
 うん、そうだね。一体どうやって慰めてくれるのか、期待しておこう。

 僕はカーテンを閉めようと、窓の前に立った。夜空に浮かび輝きを放つ満月が、街灯の無い島を明るく照らしている。

 リーチェ、さっき言った事は本当だよ。
 君がいなければ、きっと僕は魔王になっていただろう。
 こんな無意味な世界、一瞬で滅ぼしてしまっていたかもしれない。
 孤独という闇に捕らわれ寂しさに震える僕に光を灯し、手を差し伸べ、助け出してくれたのは君だった。
 僕を救い、この世界を救った本当の勇者は君だったんだ。
 
 
 僕はもう、君の前では何も偽らないと誓う。ありのままの姿を見せるよ。
 髪の色も、すぐに元の色に戻るだろう。
 それでももう、何も恐れることはない。
 
 「黒髪イケメン最高ね!!!」

 そう言って、君は笑ってくれるだろうから。
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