白馬の王子と風の歌 〜幼馴染は天才騎手〜
 お見舞いに来てくれたハルマはあたしのせいじゃないと慰めてくれたけれど、信頼できるパートナーを自分のせいで失ったショックは、怪我をしたことよりも辛かった。
 だからもう、馬に乗ることはやめようと決めた。
 だって。目の前で安楽死させられたクイーンシュバルツはもう、青い瞳をひらかない。
 ハルマはあたしの決意を悲しそうにきいていた。「馬を嫌いにならないで」と懇願された。嫌いになったわけじゃないよと笑って、だけどいまはそっとしておいて、と、十四歳のあたしは彼と距離を置く。

 しょせん、乗馬クラブで顔を合わせているだけの幼馴染だったのだ。離れれば彼への初恋に似たこの気持ちも消えるはず。
 そう思っていたのに、受験シーズンを迎えてからもあたしはハルマのことばかり考えていた。
 そのうえ、お節介な人間はどこにでもいて、彼がプロ騎手を目指して競馬学校を受験するという情報まで手に入れてしまう。
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