白馬の王子と風の歌 〜幼馴染は天才騎手〜
   * * *


 そして彼女との接点を失ったまま、中学三年生になった。俺は相変わらず地元の乗馬クラブに毎日顔を出して馬に乗っていた。プロ騎手になりたいと両親に告げれば、わかっているとばかりに家族は応援してくれた。ほんとうならフーカにも伝えたかった。けれど臆病な俺はけっきょく声をかけることができなかった。

「ハルマ、競馬学校に進学するってほんと!?」

 年明けの試験に合格した俺のことを家族の誰かが彼女に伝えたのだろう。クイーンシュバルツの死から一年と三ヶ月が経っていたその日、フーカが俺に問い詰めてきた。そうだ、と頷く俺を見て、彼女はどこか安堵した表情をしていた。
 騎手になるには中学卒業後に競馬学校へ入学する必要がある。募集は年に十人ちょっとという狭き門だ。彼女も競馬好きの父親を持っているから、騎手になる方法については知っていたのだろう。
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