白馬の王子と風の歌 〜幼馴染は天才騎手〜
「おめでとう。ずっとプロ騎手になってダービーに出たいって言ってたものね」
「まだ、スタート地点に立ったばかりだよ」
「それでも。すごいことじゃない。ショーマお兄ちゃん鼻高々で教えてくれたよ」
「兄貴か」

 フーカが乗馬をやめてからも、兄は彼女のことを気にかけていたらしい。俺との仲がぎくしゃくしていたことにも気づいていたくらいだ。俺がなにも言わずに競馬学校へ進学するとでも思ったのだろう……余計なことを。

「だけど、中学卒業したらしばらく会えなくなるね」
「そうだな」

 競馬学校は全寮制だ。早朝から馬の世話を行いながら、勉強と実技を三年で身につける必要がある。三年間の厳しい寮生活の後にプロ騎手実技試験を受け、卒業できたものだけがプロとして認められる。
 恋愛などもちろんする暇もない。世界的には女性騎手も注目されているが日本ではまだまだ男性騎手の数が多い。プロになれば出会いの場は増えるだろうが、それでも馬が恋人だと宣言する騎手もいるくらいだ。
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