極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「うれしくてお漏らししちゃったかな」
この状況でニコニコしている男性。

笑い事じゃないわよって叫びたいのを必死に抑え、私はハンカチを取り出した。
ハンカチで拭いてもクリーニングに出してもこの服はもう着れないかもしれないけれど、自宅まではまだ距離がありとりあえず応急処置をするしかない。

「さあおいで」
私が水道に向かうために降ろそうとしたワンちゃんを男性が抱き上げてくれた。

「すみません、ありがとうございます」
「いえ、それよりこの子、あなたのワンちゃんですか?」
「いいえ、さっきここで会ったばかりです」
「へー」

野良犬を抱え、夜の公園でブランコに座る女って痛いのかな。
変な奴だと思われているのかもしれない。

子犬とはいえワンちゃんのおしっこは臭いもあり、ハンカチで拭く程度ではきれいにならなくて、結局水道の水でスカートを洗い流すしかなかった。

うわー、ビショビショ。
これで電車には乗れない。
仕方ない、もう少し乾いたらタクシーで帰ろう。

「あのー、よかったら家に来ますか?」
「え?」

「イヤ、このままではお困りかなと思って。僕のマンションはすぐなので、よかったら何か着る物をお貸ししますが」
「でも・・・」
さすがにそれは図々しい。

「もちろん、ご迷惑でなければですけれどね」
「そんな、迷惑なんてとんでもない」
「じゃあ、行きましょ」
「は、はい」
喜んで。
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