極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
あー、今日は最悪だったな。
泉美は面白そうに笑っていたけれど、月に一度のチャンスをあんな若造に潰された私はがっかり。
泉美と別れた後も気持ちが収まらなくて街をふらついてしまった。

大都会東京とはいえ、どこもかしこもが繁華街ってわけじゃない。
一本裏道に入れば住宅地だってあるし、公園もある。
私が足を止めたのもそんな場所。

昼間はきっと多くの人で賑わうだろうと思われる緑豊かな公園。
その一角に置かれたブランコに座り空を見上げる。

「奇麗な空だなぁ」

都会で見る夜空に星は多くない。
でも、満月の今日は大きな月が輝いている。

「クゥーン」

ん?
すぐ横から鳴き声が聞こえ、足元をなめられる感覚。

見ると、まだ小さな子犬。
首輪も付けていないから野良犬かもしれないけれど、人懐っこく私にすりすりしている。

「どうしたの?」

私は汚れた子犬をためらうことなく抱え上げて、膝に乗せた。
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