極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません

かわいそうに体は土で汚れ、毛玉もできている。
どう見ても飼い主はいないみたいだし、このままじゃ保健所に保護されるかもしれない。

「そうだ、いいものがあるのよ」
そう言えば鞄にパンを入れているのを思い出した。

出てきたのは握りこぶしほどの小さなパン。
お店で一つだけ残ったのを鞄に入れていた。
天然酵母を使ったシンプルなパンはワンちゃんでも食べられるだろうと、一口大にちぎった。

「誰もとらないからね、ゆっくり食べなさい」
頭をなでながらパンを差し出すと、私を見上げてからゆっくりと口をつけるワンちゃん。

かわいいなあ。
無条件でかわいい。
これって泉美の子供たちを見るのと同じ感覚。
無責任に聞こえるかもしれないけれど、できればこの命を守りたい。

「家に来る？」
「ワンッ」

おお、返事をした。

今住んでいるマンションはペット可のところだけれど・・・確か事前申請が必要なはず。このまま連れて帰るのはまずいよね。
どうしよう・・・