迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。

次期長となる者(二)

 引っ越しを終えた次の日に本家への挨拶が行われる予定だったが、長の体調不良により今日まで延期となっていた。

 しかも祖母から言われたのは、一人で本家へ行くようにという少し頭の痛くなるような話だった。

 元々、本家になど大して行ったこともない子どもが、一人で顔を出すなど嫌で仕方がない。

 しかし、父は相変わらずあの言葉を繰り返すだけで味方をしてくれることはなかった。



「あ、あの、皆さま来るのはもう少しかかるのでしょうか」



 やや片言で、この会場を切り盛りしているお手伝いさんに私は声をかけた。

 ここは本家の大広間だ。

 一番奥の上座は一段高くなっており、長が座る席だろう。

 そしてその正面に今私は座らされている。私の横に並ぶ座布団は三つ。

 私はここへ通されるなり、すぐこの長の対面となる場所を指定され、かれこれ10分近く座っている。

 そして私たちの席を囲うように、左右にはずらりと座布団が敷き詰められていた。

 一体、今日は何人ここへ来るというのだろうか。



「もうお一人の(かい)様でしたら、今お見えになりましたよ。もうお一人の長候補だったお方は、参加できなくなったとお聞きしております」



 お手伝いさんは決して私に目線を合わせることなく、お辞儀した格好のまま答えてくれた。



「……戒って……」
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