王室御用達の靴屋は彼女の足元にひざまづく
 檜山はコテというか、小さな斧のような工具を手に持つと、皮を正確に裁断していく。

 手の甲や腕に筋が浮かび、筋肉が動くのが見て取れる。
 ぶ厚いものを断ち切っていくのだ、ものすごい力が込められているのだろう。
 けれど、檜山の手はあくまで優雅に動く。ゆっくりと、しかし着実に美しいカーブを皮から切り取っていく。

 切り抜いた皮は、型紙そのものの不思議な楕円形になっていた。
 檜山は今度は丸鋸と金槌を用い、数十個にも及ぶ円を切り抜いていく。

 今日はそこまでだった。
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