王室御用達の靴屋は彼女の足元にひざまづく
キャベツを落とさないよう器用に食べている檜山の背中を眺めているうち、休みは今日までであることを思いだす。
 陽菜の靴探しの為に取得した休暇だった。

 陽菜の靴を探さなければならない。
 なのに、檜山の背中を見惚れてしまう。
 そのたびにハッとしながら、晴恵はネットでオーダーメイドの靴職人を探す作業を繰り返す。

 しかし。
「これなら」と思ったメーカーにはすぐ連絡を取るのだが、よい返事は得られない。

 ……檜山に頼みたい。
 けれど催促や進捗確認の電話やメール、なによりも注文書の山を見れば檜山に割り込み注文を頼む気持ちは失せていた。
< 19 / 70 >

この作品をシェア

pagetop