社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
「嵐山。
 社史編纂室はどうだ?」
と将臣が訊いてきた。

 そんな今更、あらたまって……

と思ったが、よく考えたら、そんな真面目な話はしたことがなかった。

「すごく居心地いいです」

 将臣と八十島が、なにか考えているようだった。

 たぶん、今の小動物が冬眠の流れから。

 彼らの頭の中で、私は会社の地下に穴を掘り、ふかふかの(わら)とか溜め込んで、もふもふ寝てんだろうな、と千景は推察する。

 ……いや、そういう居心地の良さではない。

「希望の部署ではなかったですが。
 みなさん、やさしいですし。

 社史のための資料集めも、やってみると、とても面白いです」

 そうか、と言ったあとで、気づいたように将臣が言う。

「そういえば、お前の希望の部署って何処だったんだ」
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