社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
「社長、愛人とコソコソ通勤してることになってますからね。
 相手が私だとは、まだバレていないので」
と言うと、将臣は渋い顔しながらも言う。

「まあ、愛人と出社してる、の方がマザコンと広まるよりマシか」

「……あの、私的には、なんにもマシじゃないんですけど」

 そう訴えてみたが、
「お前とバレてないんならいいだろう」
と言われてしまう。

「っていうか、なんで愛人だ。

 俺は独身だ。
 それを言うなら、恋人だろう」

 誰にも(とが)められる話じゃないな、と将臣は言いながら、タクシーを裏通りで止めてもらっていた。

「でも、社長、ホンモノの恋人とかに伝わったら、怒られるんじゃないですか?」

「ホンモノの恋人なんていない」

 そう言いながら、将臣は金を払い、降りようとする。
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