社長っ、このタクシーは譲れませんっ!



 仕事の休憩中。
 壁際にあるポットのところで、千景はインスタントのあわあわコーヒーを作っていた。

 半地下の社史編纂室は給湯室から離れているので、このポットでお茶を淹れることが多い。

 ホンモノの恋人はいない、か。

 イケメンで御曹司で社長で。
 まあ性格も悪くない気がするのに、何故、恋人がいないんだろう。

 誰もほっとかない気がするのに。

 もしや、何処かに大きな欠陥がっ!?
と過大評価なんだか、過小評価なんだかわからないことを考える。

 ……ああ、待てよ。
 マザコンだったか。
と、だから、違うっと将臣に叫ばれそうなことを思ったとき、

「お疲れ」
と横に誰かが立った。
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