社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
 その人物が大きいので、千景の手元が暗くなり。

 ああ、武者小路さんだな、と千景は思った。

 まあまず、声でわかれと言われそうだが。

「武者小路さんって、言動はイケメン風よね」

「あの人、顔は整ってるよね。
 やせたら、すごい格好いいんじゃない?」
と同期の女子たちが言っていたが。

 いや、このふかふかな感じもぬいぐるみっぽくて良いのでは? と千景は思っていた。

 武者小路はチラと千景の手元を見て、
「好きだな、女子。
 泡の出る飲み物」
と言う。

 そう言われると、ビールかなにかのように聞こえますね、と千景は苦笑いする。

 だが、ミルクのあわあわがのっていると、なんでも美味しく感じてしまうのは確かだ。

 武者小路はそのあわあわができる飲み物のスティックには目もくれず、バサッ、ジャバッという感じで、普通のインスタントコーヒーを作っていた。

 そして、こちらを見もせずに、いきなり言う。

「社長と毎朝、一緒に出社してる女性社員というのはお前か」
< 48 / 477 >

この作品をシェア

pagetop