社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
 


「千景ちゃん、今から最上階の資料室に行くの?」

 仕事に戻った千景は編纂室に戻ってきた坂巻(さかまき)トモエにそう問われた。

 室長に今、用事を頼まれたのを聞いていたようだ。

 あ、はい、と言うと、

「じゃあ、ついでに、地下倉庫の仙人に、このメモ渡してきて。
 あの人、電話出ないから」
とにっこり笑顔で坂巻は言う。

 ……私、最上階に行くと言いましたよね?

 どの辺がついでなのですか。

 そして、ここには、前倉さんという仙人のような人がいますが。

 まだ他にも仙人がいるのですか、この会社は。

 ここは桃源郷ですか、と思いながら、千景は、まず最上階に行き、仙人が住まうという、地下二階の倉庫に向かう。

 たまたま誰も乗ってこず、ひとりでエレベーターに乗っていたのだが、途中で止まり、扉が開いた。

 将臣が立っている。

 慌てて頭を下げ、隅に寄ると、将臣は眉をひそめた。
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