社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
 あまり人が通らないからか。

 蛍光灯の灯りが一個飛ばしにしかついていない。

 節約のためか、蛍光灯が外してあるようだった。

 素敵な場所に連れていってくれるはずの靴の音が人気のない長い廊下に響く。

「……こんな窓のない地下みたいな場所ほど、煌々(こうこう)と照らして欲しいですよね」

 夜道で見るコンビニくらいの明るさで、と千景は言った。

「あれ、思わず吸い込まれてしまいそうですよね」

「そうだな。
 蛾や虫とともに、お前みたいな奴が集まってくるんだろうな」

 ……もっといい例えはないのですか、と思ったとき、地下倉庫に着いていた。

「うん? ここ来たことあるな」
と将臣はその窓のないグレーの扉を見て言う。

「だいたい社内は見て歩いたが。
 そういえば、地下は来てなかった気がするんだが……」
と言いなから、将臣はガチャリと扉を開けようとする。

 思わず、その腕をつかんでいた。

「何故、止める……」
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