社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
 

 廊下に出て、
「しかし、社長の交代もご存知ないとか。
 社報も配られていないのでしょうかね、この倉庫には」
と千景が呟いたとき、さっきからなにごとか考えていたらしい将臣が渋い顔をして言った。

「……そうなんだよな。
 おじさんの会社だから、そんなにこの会社には来たことなくて。

 秘書課の連中や重役連中ともあまり面識がなく。

 前の会社のときも、こことは関わりなかったし。

 だから、この何処の馬の骨ともわからない若造がいきなり社長になりやがってってなるんだよな」

 いや、何処の馬の骨かはわかってるでしょうよ。
 会長の孫なんだから、と千景は思う。

「そうですねえ。
 社長の息子で、ここの社員の方々と面識があったら。

 まあ、あの子がこんなに立派になって、って今の仙人さんみたいに、目を細めて見られるかもしれないですけど。

 どのみち、そのあと上手く行くかどうかは仕事の能力次第なのでは?」

「……お前、妙なところでシビアだな」
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