社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
「親族経営には変わりないけど。
 微妙に親子で離してあるのは、会長の祖父心なんですかね?

 甘々ではない環境で鍛えようという」

「まあ、そうかもしれないが。
 八十島は崇拝していた前社長が異動してしまい。
 来たのが若造の俺なんで、尋常ではないくらいに、冷ややかに俺を見ている……」

 甘々ではない、どころか、崖からいきなり突き落とされた感じだ、と言う。

 だが、
「わかりませんよ」
と千景は言う。

「突き落とされた崖の下には高いヤシの木がいっぱいあって。
 ぽよよんっと弾かれて。

 無事に下に降りてみたら、そこは感じのいい南の島だったりするかもしれないじゃないですか」

「感じの悪い南の島ってあるのか……」

 ほんと一言多いな、この人……。
 八十島さんに睨まれるはずだ、と千景は思う。
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