社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
千景は将臣とともに、明るい地上まで階段を上がる。
そこで別れ、建物の反対側にある編纂室に戻ろうとしたが。
ガラス張りの広い玄関ロビーを端まで歩いたところで、道を塞がれた。
「あんただったのね」
手入れの行き届いた肩までのウェーブの髪。
小洒落たニットワンピースを着た女が腰に手をやり立っている。
「社長と毎朝出勤してくる怪しい女の正体は、あんただったのね」
いや、毎朝でないうえに、特に怪しくもないと思うんですが……と思いながらも、何故、そう思ったのかが気になり、訊いてみた。
「えーと、何故、そう思われましたか?」
「今、社長と二人で暗がりにいたじゃないっ」
どうやら、二人で地下にいたところを見られたようだ。
「オフィスで男女が暗がりから出てきたら、怪しい関係なのに決まってるでしょうっ?」
……偏見ですよ。