社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
「あの、地下が暗がりだったのは、我々のせいではないのですが。
 気になられるのなら、総務の方に、蛍光灯を増やすよう申請してみられては……」

 いや、問題はそこじゃないわよっ、と怒られる。

「そして、私は総務よっ。
 私はね、入社早々、玉の輿を狙ってくるあんたの姿勢を怒ってるのよっ。

 会社に入ったからには、まずちゃんと仕事しなさいよっ」

 それは確かに、ごもっとも、と思いながらも。

 顔見知りでもないのに、突然指導してきたことも。
 この激しい怒りも不思議だ、と思った千景は訊いてみた。

「あの~、すみません。
 どうして、そんなに怒ってらっしゃるんですか?」

「玉の輿狙ってるからに決まってるじゃないっ」

 ……そうなんですか。
 仕事してください、と思いながら、彼女を見ると、

「わ、私はもう長く勤めてるから別にいいのよっ」
と言う。

 そこで、少し考え、千景は言った。

「でも、ほんとうに私が入社早々、玉の輿を狙ってる女で、社長と付き合ってるとしたら。

 そんな女に引っかかる社長も社長ですよね」

「……いや、あんた、何処サイドに立って物言ってんのよ」
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