社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
「またタクシーで来たんですか」
と八十島は呆れ気味に将臣に言った。

「いや、今日は間に合うところだったんだ。
 でも、バスに乗ろうとしたら、いつものタクシーが通りかかって……」

「そうなんですよ。
 運転手さんの悲しそうな顔が頭に浮かんじゃって、つい。

 いえ、実際にはそんなことはなかったんですけどね」
と二人で言い訳してくる。

 遅刻しそうだったわけでもないのに、またタクシーを追いかけて。
 結局、今日も走ったようだった。

 いっそ、会社まで走ってこい、と八十島は社長もまとめて、ぶった斬る。

 ……今日も猫の面倒見に行ってたのか、とまだ揉めながら前を歩く将臣を見た。

 将臣の母の持ち家があの近くにあるのは知っていた。

 だから、千景から話を聞いたとき、ふうん、と思ったのだ。
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