社長っ、このタクシーは譲れませんっ!
 実のところ、社長の周りをウロウロするコバエのような女子社員を、社長の仕事の邪魔にならないか、見定めようと思っていたところだった。

 すると、千景自ら言ってくる。

「私が社長の周りをウロウロしているので、秘書として気になるとかですか?」

「だいたい当たってる」

 前を見て歩きながら八十島は言った。

 ……『コバエのように』が抜けてるが、と思いながら。

「頼まれたからな、前社長から」
「えっ?」

「将臣を頼むと言われたんだ。
 なんだかんだで可愛い甥のようだから」

 俺はほんとうは前社長について行きたかったんだ、と編纂室へ行く道が薄暗く人気がなかったせいか、つい、本音をもらしてしまう。
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