排球の女王様~私に全てを捧げなさい!
ニッと笑った大地が、莉愛に向かって拳を突き出してくる。莉愛もそれに促されるように右手を大地に向かって突き出した。体育館の舞台に立つ莉愛と大地の距離は少し離れているというのに『莉愛見ていたか?お前は誰にも渡さない』と、大地の思いが流れ込んでくるような気がした。
大地頑張って……。
無言で見つめ合う二人を見た島谷が、悔しそうに奥歯を噛みしめる。
「くそっ!」
島谷が悔しそうに声を出しながらボールを拾い、何度かボールを床に突く。夏合宿から精度を上げ続けた、渾身のジャンプサーブを大地に向かってお見舞いする。先ほどより早く威力のあるサーブが大地の立つコートめがけて飛んできた。しかし、大地はそのボールを捕らえ軽いステップを踏むと、レシーブで受け止めた。高く上がったボールにギャラリーがどよめく。
「おおー。すっげー。上がったよ」
「あんなの上げられるんだな」
レシーブを上げた大地が嬉しそうに右手を握り絞め、後ろに引いた。
「よしっ!」
大地の声が体育館にこだますると、歓声が上がった。お祭り騒ぎの様に盛り上がる体育館だったが、この後、事態が一変する。大地のレシーブで、わーっと上がった歓声のあと、歓声とは違う大きな怒声が聞こえてきた。
「こらーー!!お前達、この時間の体育館の使用許可を出した覚えは無いぞ!!」
先生の大きな怒鳴り声に、生徒達がやばいと体育館から逃げ出していく。先生はそれを横目に、体育館の中にズンズンと入ってくる。
「こんな騒ぎを起こしたのは一体誰だ?!」
先生はぐるりと体育館を見ると、舞台の上に立つ私達の所へと目掛けて歩いてきた。
まずい……。
怒られる事を覚悟した莉愛だったが、先生が莉愛の所に来る前に、先生の前に立ちはだかったのは翔だった。