王女の選択
「ストラウス公国の兵士達には城内ではなく、堀の脇にあった放牧地で野宿を許可しますがよろしいですか」
「かまわない」
ジェラルドの返答にカーラはホッとした。
例えカーラ側が負けを認めジェラルドに終戦だと言われたとしても、これ以上敵の兵を城壁内に入れたくはなかった。
ジェラルドは後ろに控えていた騎士の一人、頬に傷のある男に戦いの終わりを知らせ、兵を堀の傍にある放牧地に野営を組むよう指示を出した。
「ロイド、私達の兵にも同じ通達を。できれば・・・ヒューゴにジェラルド大公の騎士と共に伝達させるよう伝えてちょうだい。それから側塔には終戦の旗を」
ロイドが戻ってくるまで厩舎で待っていることを伝え、ロイド抜きでは主館には足を入れないことを暗に伝えた。
ロイドはカーラの意図をすぐに読み取り、すぐ戻ってまいりますと顔に傷のある男と共に馬を走らせた。
突然静けさが襲い、カーラは居心地を悪くさせながらジェラルドの軍馬をそっと撫でた。
「怖いか?」
「え?」
突然のジェラルドの質問にビクッと肩を震わせた。
「私といるのは怖いかと聞いている」
警戒していることに気づかれているのだろうか。
ドキッとしながらもカーラは馬丁が運んできた水桶の傍までジェラルドの軍馬を連れていき、自分の馬の綱を馬丁に託した。ジェラルドの数歩後ろにたたずんでいた騎士にも目を向け、彼の馬にも水を与えさせた。
「怖くは・・・ないと思います」
カーラはつぶやくようにジェラルドに応えた。
「怖くはないですが、大公殿の考えていることがわからない。どうすればいいのかわからないのです」
ジェラルドは身動きせず、カーラの言葉に耳を傾けているようだった。
「これから大公殿を主館に招き入れるということは果たして正しいことなのか。父の・・・国王の首を狙っている人物を城に入れることはどういうことなのか、何を意味するのか考えています」
「其方の立場を考えれば、従うべきだと思うが」
「わかっております。私一人より、ロイド・・・先ほどの騎士団長ですが、彼と一緒なら安心できます。私にとって育ての親のようなものですから。父は・・・国王には厳しく育てられました。望んでいた息子でなかったから・・・」
「だから、国王の息子のように振舞っているのか?」
「っ!?無理だとわかっています。ただ・・・少しでも国王を支えられるようになろうと・・・」