王女の選択
「お時間ありますか」
顔を上げると、いつの間にかヴィクトーがガゼボの階段の下に立っていた。
カーラは少し脇にずれると、どうぞお座りになってくださいと、空いている場所を示した。
ヴィクトーは動くことなく、その場に立ち尽くしたままカーラを見つめていた。
居心地が悪くなるような静寂が二人を取り巻く。
カーラはドレスの裾を理由もなくまっすぐに伸ばしながら、自分が何か話しかけるべきか考えていた。しばらくの間ヴィクトーはカーラを観察していたが、静かにため息をつくと、ガゼボの壁に寄りかかった。
「戦場でカーラ殿を初めて目にした時・・・」
ヴィクトーは静かに、誰にともなく話し始めた。
「内面から溢れ出る貴方の強さに、心を奪われました。今まで出会った女性の中で誰よりも魅力的でした」
カーラはびっくりして顔をあげた。
「そして、我が君主ジェラルドもその魅力に気づいた一人でした。そしてあっという間に貴方を攫って行ってしまった」
ヴィクトーは少し俯きその時のことを思い出したかのようにほほ笑んだ。
「あんなジェラルドを見るのは初めてでした。ご存知かわかりませんが、ジェラルドは冷酷な君主として周辺国には名を馳せています。それでもセルドウィックとの戦いが始まるまでは他国の王族や貴族が競って娘を送り込み、なんとか関係を深めようとあらゆる手を使って来ました。実際ジェラルドの所に何人の女性が送り込まれたかあなたには想像すらできないでしょう」
カーラは呼吸を整えようと両手を胸元においた。ヴィクトーが何を言いたいのかよくわからないが、カーラの不安を増長させるには十分だった。