王女の選択

アングラード王国。


それは、ストラウス公国やセルドウィック王国とは比べ物にならないほどの大国であり、軍事強国ではないが、軍は優れた装備と頭脳を備え、どこよりも栄えていた。
数年前、無謀にも戦いを挑んだバロー国は壊滅的な被害を受け、今もまだ完全に立ち直れずにいる。
しかしあの戦いでアングラードはバローを属国とはしなかった。アングラード国王はその戦いがバロー内部紛争が発端となったことをうけ、その中心人物のみ処罰し、第一王位継承者であった二番目の王子にバローを統治させ、アングラードとの平和条約を結ばせたのだった。

戦いの後、アングラード王国は名実ともに強国の名を辺りに知らしめるだけでなく、賢王が統治する王国として一目置かれるようになった。
そして、その最前線にいたのがアベラール辺境伯だと聞いている。

ジェラルドの胸に顔を埋めたまま、視線だけそっと移動すると彼の顔が目に入ってきた。
ジェラルド同様かなり整った顔で少し細身の、チェスナッツブラウンの短髪がよく似合っている青年だった。
彼は手袋を取ると、にっこり笑ってから優雅にお辞儀をした。

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