神殺しのクロノスタシスⅣ
書けるのだ。

解答用紙に、答えを。

自分でも唖然としていた。

でも、見間違いではない。

俺の手は、俺の意志に反して、勝手に動いていた。

頭の中は、「何だこれ?」状態なのに。

俺の手は勝手に複雑な数式を書き出し、次々と解答用紙を埋めていく。

問題文なんて、全く理解していない。自分が何を書いているのかも分かってない。

まるで、自分が自動で動く計算機にでもなったかのように、複雑な数式を書いては、解答用紙の空欄を埋める。

合ってるの?これ本当に合ってる?

あまりに意味分からな過ぎて、頭がバーストを起こし。

勝手に、それっぽい数式を適当に書いて、満足してるだけなのでは?

自分でも、自分のやっていることが信じられなかった。

しかし、俺の手は勝手に動く。そう命令されたかのように、一問解いては次の問題、一問解いては次の問題に進む。

問題用紙を一枚捲って、また訳分からん、折れ線グラフみたいな図が出てきても。

全く動じず、解答用紙を埋めていく。俺の手が止まることはない。

誰かに操られているのか、と思った。

でも、それは違う。

俺は、俺の意志で手を動かしている。

この手は俺のものだ。誰にも操られてなんかいない。

それなのに、俺の全く理解出来ない数式を書いている。

それを書くように指示しているのは、俺の頭なのだ。

何なんだ、この現象は。

俺が書いてるのに、俺は何を書いているのか、さっぱり分かっていないのだ。

そして。

自分でも、何をやっているのか、何でこんなことが出来ているのか、さっぱり分からないままに。

俺はいつの間にか、解答用紙の空欄を、全て埋めていた。

目の前の光景が信じられない。

本当にこれは、俺が書いたものなのか?

他でもない自分が、自分の手で書くところを目の当たりにしている癖に。

俺は、信じられない思いで解答用紙を見下ろしていた。

全てを書き終えた俺が、シャーペンを机に置いたとき。

教室の中に、チャイムの音が鳴り響いた。
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