神殺しのクロノスタシスⅣ
これだけでも、既に信じられなくて頭パニック状態なのに。

提出した解答用紙が、約一時間後に採点されて、返却されたとき。

俺は、再び度肝を抜かれることになった。

正解しているのだ。

全問正解とは行かずとも、200点満点中、198点という、値段にするとちょっとお得な価格みたいな点数を叩き出していた。

チラシに載ってそう。

つーか、100点満点じゃないのか。

しかも、200点満点中198点って、それ一問しか間違えてないってことじゃね?

もしかして、俺は天才か。

違うよ。俺の手を動かした奴が天才なんだ。

解答用紙を返却してくれた先生は、「惜しかったですね。計算ミスが一つあったので、それさえ直せば完璧でした」と言った。

こんな摩訶不思議な試験問題、一問でも掠ってれば天才だよ。

その後先生は、解答用紙を持って呆然としている俺を、皆の前に立たせた。

挙げ句。

「今週の試験も、彼が一番の成績でした。皆さん、彼を見習うように」

誇らしげに、先生はそう言った。

おい、やめろ。嘘だろ。

カンニングして良い成績取ったのを、褒められているような。

そんな罪悪感を感じる。

カンニングはしてないが、手が勝手に動くという不思議現象が起きた。

「先生違うんですよ、俺じゃないんです。って言うかあなた誰?ここは何処?何なら俺は誰?」と。

俺は、聞きたいこと全部を、先生に食って掛かって聞きたかった。

しかし、出来なかった。

身体が動かなかったのだ。

口も動かなかった。

ただ、呆然と突っ立っているだけ。

そして、俺は教室にいた他の生徒から、称賛の拍手を受けた。

やめろって。俺じゃないんだから。

でも、俺にはどうすることも出来なかった。

…おかしい。

何もかも、全てがおかしい。

これが夢じゃないなら、この現実は何なんだ。

俺は、自分じゃない何者かになってしまったとでも言うのか?
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