神殺しのクロノスタシスⅣ
マジでどうなってんだよ…。ここ何処なんだよ、ってかあんた誰?その格好何?ケバくね?

と、聞きたいことは山程あるのに。

俺はまたしても、俺の意志に反して。

学生鞄の中に手を突っ込み、一枚の紙を取り出していた。

さっきの数学の解答用紙だ。

お一人様198円、じゃなくて198点の、あの解答用紙。

俺は誇らしげに、その女性に解答用紙を見せた。

「母さん、これ見て」

あ、この人お母さんなの?

「塾で試験があったんだ。昨日頑張って、遅くまで勉強したから…ほら」

誇らしげに、解答用紙を母親に見せる俺。

200点満点中の198点なんだから、それは誇って良いと思う。

つーか、あんな意味不明な問題出されて、この点数を取れるっていうのは…。

普通に凄いと思う。塾でも先生に褒められてたし。

すると、母親は。

「あぁ、そう。凄いじゃない。良かったわね」

あれ?なんか思ってたより反応薄くない?

ちょっとどうでも良さそうに聞こえたの、俺だけ?

一応解答用紙を見て、満足そうな顔をしてはいるものの。

心から喜び、褒めている訳ではない…ように見える?

すると、次の瞬間。

母親の口から、とんでもない言葉が飛び出した。

「あなたは魔導適性もないし、魔導師にはどうやってもなれないんだから…。せめて勉強くらいは出来ないと、まともな人間にはなれないわよね」

…は?

「その点、あなたは頭だけは、私達に似て良いみたいだし。それは本当に良かったわね。弁護士か、会計士にでもなったら?あ、医者でも良いわね」

…はぁ?

「ま、この成績なら大丈夫そうだけどね。とにかく、うちの家名に泥を塗るのだけはやめてね。魔導適性もないんだから、せめて学のある人間にならなきゃ、救いようがないもの」

…はぁぁぁぁ?

…頭正気か、このババァ。

「あ、キッチンに夕食があるから、勝手に食べてね」

と、言うが早いが。

もう興味なし、と言わんばかりに、母親はスタスタと自分の部屋に戻ってしまった。

…何だ、あの糞みたいなババァは。

とりあえず追いかけていって、「ちょっと待てやコラ」と胸ぐら掴んで良い?

絶対そうして良いよ、そうしても文句言われないよ、と俺は思った。

しかし。

「…」

俺はその場から一歩も動けず、代わりに、誇らしく掲げていた解答用紙をクシャッ、と握り潰したのだった。

…折角の、税込価格198点が。

帰ってくるなり、そのままゴミ箱にダンクシュートされてしまった。

そして俺は、母親を追いかけて詰め寄ることも出来ず。

黙って、夕食が用意されているというキッチンに向かったのだった。
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