神殺しのクロノスタシスⅣ
…ったく。

何処の誰だよ。俺の夢を邪魔したのは…。

俺は渋々目を開け、周囲の状況を確認した。

…。

「…何処?」

俺は思わずそう呟いていた。

広い部屋に、机がいくつも並び。

部屋の奥には、黒板がついている。

教室っぽい場所のようだが、ここは学校なのか?

しかし、こんな教室の風景は記憶にない。

自分が、全く見覚えがない場所にいることにようやく気がついた。

しかし。

「何を寝惚けてるんだ、馬鹿が」

後ろからまた、怒ったような声が聞こえ。

再度、後頭部をはたかれた。

いった。

さっきから何なんだ、人の頭をサンドバッグみたいに。

何奴、と思って振り返ると、そこには。

開いたテキストを片手に持った、中年のおっさんが立っていた。

頭…ハゲてるな。

こいつか?自分の頭はハゲてる癖に、人様の頭をバシバシ叩いているのは。

いくらお前、自分の頭が焼け野原だからって、人のふさふさヘアーが羨ましいからって。

人様の頭を殴ったって、お前の髪は復活しないぞ。

しかもさっき、俺に向かって「馬鹿」って言ってなかった?

確かに俺は馬鹿かもしれないが、しかしハゲにだけは言われたくない。

更にそのおっさんは、偉そうな態度で言った。

「授業に集中しろ。そんなだから、お前はいつまでたっても馬鹿なんだよ」

…イラッ。

おい。何様だこの野郎。

何で夢から覚めたと思ったら、いきなり知らないハゲたおっさんに、二度も叩かれ。

その上、二度も馬鹿呼ばわりされなきゃならないんだ。

自慢だが俺の心は、そんなに広くはない。

こいつが何者なのかは分からないが、初対面でここまで無礼を働いてきたのだから。

こちらも礼を見せる必要はない。

手始めに、頭に残っているなけなしの髪の毛を、一掴み鷲掴みにしてやろう…と。

したのだが。

「…済みません」

何故か、俺の口は勝手に動いていた。
< 218 / 795 >

この作品をシェア

pagetop