神殺しのクロノスタシスⅣ
予想していたことではあったが、その画用紙に描かれていたのは、後輩の似顔絵だった。

年相応に稚拙な絵だが、素人目から見ても、なかなかよく描けている。

日がな一日、することもなく、クレヨンを握ってスケッチブックに向かってばかりいるから。

嫌でも上手くなるのだろうと思った。

「わぁ、凄い。上手だなぁ。ありがとう」

後輩は、大袈裟なまでに驚いて、そして笑顔で帽子の上から少女の頭を撫でた。

「凄く上手に描けてるよ。これ、持って帰って家に飾っておくよ」

「えへへ…」

褒められて、少女は心から嬉しそうだった。

こんな少女でも、笑うことが出来るんだな。

「大きいお兄さんには?描いてあげなかったのか?」

「描いてますよ。ほら」

少女は、二枚目の画用紙を取り出した。

あぁ、昼間に描いていた奴か。

「はい、こっちは大きいお兄さんに」

「ありがとう。くれるのか?」

「はい!勿論です」

俺は自分の意志ではなく、身体が勝手に動くままに、少女の手渡す画用紙を受け取っていた。

正直、自分の似顔絵などに興味はないのだが。

身体が勝手に動くのだから、従うしかない。

画用紙を開いてみると、俺の似顔絵が描いてあった。

こちらも、なかなか上手に描けている。

「上手に描けてるじゃないか。頑張ったな」

「えへへ。自信作なんですよ」

それはそれは。

すると。

「お兄ちゃんには、描いてあげないのか?」

後輩が、少女にそう尋ねた。
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