神殺しのクロノスタシスⅣ
その後。

俺と後輩は、少女の求めに応じて、様々な遊びに付き合った。

トランプ、ボードゲーム、お絵描き、あやとり等々。

そうやって遊んでいる間、少女はとても嬉しそうで、ずっとはしゃいでいた。

その姿は、彼女に残された、残り僅かの人生を忘れさせるほどだった。

でも、どう足掻いても、彼女に残っている時間の長さは変わらない。

こうしている間にも、彼女の人生の砂時計は、無情に減り続けているのだ。

彼女は、それを自覚しているのだろうか?

むしろ自覚しているからこそ、こうやって我を忘れて遊ぶことで、現実逃避しているのだろうか。

俺はふと、そう考えた。

いずれにしても、俺が彼女に出来ることは少ない。

せめて今だけはこうやって、彼女を楽しませる為に、遊びに付き合ってあげることくらいだ。

…しかし、それも。

「もう、そろそろ終わりにしよう」

腕時計を見て、後輩がそう切り出した。

とても申し訳なさそうな顔だった。

「これ以上起きていたら、疲れてしまうからね。消灯時間も近いし、もう寝た方が良い」

「…そう、ですね」

先程まで、あんなにはしゃいでいたのに。

終わりを告げられた途端、少女の顔から笑みが消えた。

酷く気落ちした様子で、逆にこちらが罪悪感に駆られる。

でもこれ以上は、彼女の身体が持たない。

「また今度、遊びに来るよ。お兄ちゃんの似顔絵も、そのときに完成させよう?」

少しでも少女を励まそうと、後輩は宥めるようにそう言った。

「はい…そうします」

それでも、少女は浮かない顔で答えた。

後輩の手前、そうする、と口にしたは良いものの。

「また今度」なんて、自分にあるのだろうかと考えているように見える。

「じゃあ、今夜は…もう休むんだよ。また明日ね」

「はい…おやすみなさい」

「うん、おやすみ」

遊び道具を、全て片付け。

俺と後輩は、名残惜しそうな少女に手を振り。

病室の電灯をそっと消してから、部屋を出た。
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