神殺しのクロノスタシスⅣ
何故忘れていたのか。何故失念していたのか。
俺は、ここで看護師をやって、余命の迫った少女を相手をしている暇はないはずなのだ。
この身体には、この身体の事情があるのだろうが。
それは俺には関係ない。俺には、俺のやるべきことがある。
俺は、自分が何者なのかを覚えている。
思い出した。
しがない大学病院の看護師ではない。
俺は魔導師だ。
後輩が散々扱き下ろしてた、魔導師。
この世界では、富や権力、知識を独り占めし、多くの一般人からは忌み嫌われている、その魔導師なのだ。
…悪かったな。魔導師で。
でも、魔導師だって、好き好んで魔導師に生まれた訳じゃない。
そして、魔法で全てが解決すると思ったら、それは大きな間違いだ。
魔法は人智を超えた、大きな力であると同時に。
同じだけ、危険な力でもあるのだ。
俺もまた、その危険な力を保持する者だ。
その名前が月読であり、そして俺という人間の存在理由だ。
俺は魔導師。『死火』の守り人。
かつて神殺しの魔法と恐れられた、禁じられた魔導書の契約者であり。
同時に、この恐ろしい魔導書を、他の誰の手にも渡さない為に、長きに渡って守り続けている。
それが、俺の役目なのだ。
「…聞こえているのか、月読」
俺は、再度魔導書の写し身に向かって、声をかけた。
いつだって「彼女」は、契約者である俺の声には応えるはずだった。
しかし、今はその声が…。
『…聞こえてるよ』
…あった。
ないと思っていたら、あった。
しかし、その声は、耳で聞いたものではない。
心の中、魂の中に、直接語りかけられている。
「…姿を見せないのか?」
いつもなら、呼んでも呼ばなくても、本人の気まぐれで、俺の前に姿を現したり、消したりと、自由にしている。
前触れもなく、ふらりと俺の背後にあらわれることもあって。
知らない人間は、背後霊か何かかと腰を抜かすのだが…。
今は、四方を見渡しても、月読の姿はなかった。
しかも、いつもなら姿を現して声をかけるのに、今は心の中に語りかけてくる。
これは滅多にないことだ。
『見せない。って言うか…見せられないんだよ』
…何?
見せられない…だって?
俺は、ここで看護師をやって、余命の迫った少女を相手をしている暇はないはずなのだ。
この身体には、この身体の事情があるのだろうが。
それは俺には関係ない。俺には、俺のやるべきことがある。
俺は、自分が何者なのかを覚えている。
思い出した。
しがない大学病院の看護師ではない。
俺は魔導師だ。
後輩が散々扱き下ろしてた、魔導師。
この世界では、富や権力、知識を独り占めし、多くの一般人からは忌み嫌われている、その魔導師なのだ。
…悪かったな。魔導師で。
でも、魔導師だって、好き好んで魔導師に生まれた訳じゃない。
そして、魔法で全てが解決すると思ったら、それは大きな間違いだ。
魔法は人智を超えた、大きな力であると同時に。
同じだけ、危険な力でもあるのだ。
俺もまた、その危険な力を保持する者だ。
その名前が月読であり、そして俺という人間の存在理由だ。
俺は魔導師。『死火』の守り人。
かつて神殺しの魔法と恐れられた、禁じられた魔導書の契約者であり。
同時に、この恐ろしい魔導書を、他の誰の手にも渡さない為に、長きに渡って守り続けている。
それが、俺の役目なのだ。
「…聞こえているのか、月読」
俺は、再度魔導書の写し身に向かって、声をかけた。
いつだって「彼女」は、契約者である俺の声には応えるはずだった。
しかし、今はその声が…。
『…聞こえてるよ』
…あった。
ないと思っていたら、あった。
しかし、その声は、耳で聞いたものではない。
心の中、魂の中に、直接語りかけられている。
「…姿を見せないのか?」
いつもなら、呼んでも呼ばなくても、本人の気まぐれで、俺の前に姿を現したり、消したりと、自由にしている。
前触れもなく、ふらりと俺の背後にあらわれることもあって。
知らない人間は、背後霊か何かかと腰を抜かすのだが…。
今は、四方を見渡しても、月読の姿はなかった。
しかも、いつもなら姿を現して声をかけるのに、今は心の中に語りかけてくる。
これは滅多にないことだ。
『見せない。って言うか…見せられないんだよ』
…何?
見せられない…だって?