神殺しのクロノスタシスⅣ
…さて。

ようやく、二人きりになれたな。

異次元世界から帰還した直後も、一瞬だけ二人きりになる時間があったが。

すぐに横槍が入って、それどころじゃなくなったからな。

改めて。

「…おい、シルナ」

「何…?」

「お前、何を見たんだ?異次元世界で」

「…」

何故黙る。

「何か見たんだろ?ろくでもないもの…」

「それを言うなら…羽久こそ、何を見たの?」

おい。今は俺が尋ねてるんだろうが。

何はぐらかしてんだ。

まぁ良いだろう。俺も話してやるよ。

一方的に聞くのは、フェアじゃないからな。

「よく分からん、奴隷商会にいたよ」

「え」

「奴隷の子供を売ったり買ったり…。それも、そこのボスはシルナだった」

「え…!?」

な?信じられないだろう?

俺も、今でも信じられないよ。

でもそうだったんだよ。確かにこの目で見た。

「それはまたユニークな…いや、奇怪な世界に迷い込んだものだね…」

「全くだ。シルナのはずが全然シルナじゃなくて、気持ち悪かったよ」

今思い出しても気持ち悪い。

平気な顔して、子供を売買してさ。

処分とか言っちゃって、もう全然シルナじゃなかった。

本物のシルナは、自分の生徒を我が子のように可愛がってるもんなぁ。

売り飛ばすなんてとんでもない。

つくづく、意味分からん世界だった。

「平気で、人をモノみたいに扱っててさ…。俺に対しても、誰に対しても冷たくて残忍で…とてもシルナには見えなかった」

「…」

「だからまぁ…あれだよ」

俺は、医務室の天井を見上げながら言った。

「無事に帰ってきて、本物のシルナにまた会えて良かった。やっぱり、シルナはこのシルナじゃないとな」

あんなシルナもどき、気持ち悪くて、一緒にいられたもんじゃねぇよ。

「…そっか」

と、シルナはポツリと言った。

…意外と反応薄いな。

もう少し喜んでくれても良いんだぞ。

やっぱり疲れてるのか?天音に回復魔法かけてもらった方が良いんじゃないのか。

すると。

「私も、本物の羽久にまた会えて良かった」

シルナもまた、俺と同じことを言った。
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