神殺しのクロノスタシスⅣ
本当はもうちょっと寝ていたかったのだが。

好きな女の子に呼ばれちゃ、起きない訳にはいかないでしょう。

そんな訳で、目を開けてみましたが。

真っ先に目に入ったのは、天井だった。

背中に柔らかい感触があって、身体にも布団らしきものがかけられている。

あれ…。僕いつの間に寝て…。

…いや、そんなことより。

…ここ、何処なんですかね?

目覚めた瞬間に記憶喪失とか、めっちゃ困るんですけど。

そんな漫画みたいな展開は嫌だ…。

ちょっと起き上がって、現状を把握しよう。

…と、思ったら。

「あ!お兄ちゃん、起きたの?」

…は?

傍らに、花札で遊んでいる幼女がいた。

一人花札って、それ面白いんですか?

その幼女が、丸くて大きな目をくりくりとさせて、興味津々の様子で僕を見つめていた。

いや、僕に幼女趣味はないので。はい。

で、この子は誰だ?

「あの…あなたは、」

「ちょっと待ってね!お母さん呼んでくるから!」

質問をスルーする系幼女。

まぁ、幼女の正体を聞いたところで、何がどうなるという訳でもないか…。

幼女は花札を置いて立ち上がり、襖を開けて駆け出していった。

アグレッシブ幼女ですね。

さっき、お母さんを呼んでくるって言ってましたっけ。

つまり、この家には大人もいるということだ。

じゃあ、その人に聞いてみる方が良いでしょう。

少なくとも、幼女よりは情報を持っていそうだし…。

僕は敷布団に手をついて、のろのろと起き上がろう…と、したが。

「いっ…たたた…」

ズキン、と左足首に鋭い痛みが走った。

何なんだ?

掛け布団を払い除けて、自分の足首を見ると、白い包帯がぐるぐると巻かれていた。

打撲?捻挫?骨折?

分からないけど、痛いものは痛い。

本当に何なんですか。

こんな怪我をした記憶は、全くないんですが?

それどころか、よく見たら。

僕はいつの間にか、ゆったりとした浴衣を着せられており。

その浴衣の下は、身体中、至るところに擦り傷や切り傷、痣が出来ていた。

身体の節々が痛いのは、そのせいですか。

僕は何?集団リンチにでも遭ったんですか?
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