神殺しのクロノスタシスⅣ
酷い。
酷い…八つ当たりだ。
「…魔導師なんて、全員くたばっちまえば良いんだ」
別に、魔導師に何かされた訳じゃないのに。
魔導師が、彼の人生を狂わせた訳じゃないのに。
でも、行き場をなくした彼の憎しみの矛先は、力を持てる者に向いた。
そうするしかなかった。
そうでもしなければ。誰かを憎まなければ自分を保てないほどに、追い詰められていた。
不幸な自分の人生を、誰かのせいにしたかった。
そんなときに、魔導師の自己啓発本を読んで、そこに書かれた魔導師の詭弁に、憎しみが湧いた。
自分がこんなに苦労してるのに、魔導師は生まれつき魔導師というだけで、楽な人生を送っていると思うと。
憎くて憎くて、堪らなくなった。
そういうことなんだろう。
…気持ちは、分かる。
理解出来ない訳じゃない。
誰かを憎まなければ生きていけないほどに、追い詰められて苦しんでいる、この人の気持ちは…同情出来る。
魔導師が一般人にとって、そんな風に見られがちなのも分かる。
力を持たない彼らにとって、俺達はきっと、凄く贅沢に見えるのだろう。
金持ちには金持ちの苦労がある。でも金持ちの苦労なんて、貧乏人の苦労に比べれば楽なものだと。
そう言いたいのは分かる。
…けれど、一つだけ訂正したい。
「…全ての魔導師が、何の苦労もせず、幸せに暮らしてる訳じゃない」
さっきは、俺が君の人生を追体験したから。
今度は、君が俺の人生を追体験してきてくれないか。
そんな意地悪を考えてしまうほどに。
俺は、静かな怒りを込めて言った。
「力がある故に、死ぬほど追い詰められて…死ぬほど苦しんで…何千年も彷徨った者だっているんだ…」
恐ろしい魔物に取り憑かれ、人を殺すことを強要された。
大切な人を殺されて。故郷も家族も、自分の手で殺されて。脅されて。
脅されて、脅されて、脅されて…自分の意志を押し殺して、望まずに生きて。
「魔導師だって、君と同じ人間なんだ…。苦しみも、悲しみも、誰しも同じように感じてる…」
いっそ誰か自分を殺してくれと望みながら、でも誰一人、自分を殺せなくて。
だから命を奪った。何万、何億人を守る為に、何百人を殺して…。
罪悪感で押し潰されそうになりながら、それでも自殺することも出来なくて…。
君が魔導師を憎む気持ちは分かる。
でも、これだけは分かって欲しい。
「人間の力は平等じゃない。君が憎んでる通り…。でも、悲しみは平等だ。苦しみも痛みも、辛い気持ちを感じるその心は…誰しも皆、平等なんだよ」
酷い…八つ当たりだ。
「…魔導師なんて、全員くたばっちまえば良いんだ」
別に、魔導師に何かされた訳じゃないのに。
魔導師が、彼の人生を狂わせた訳じゃないのに。
でも、行き場をなくした彼の憎しみの矛先は、力を持てる者に向いた。
そうするしかなかった。
そうでもしなければ。誰かを憎まなければ自分を保てないほどに、追い詰められていた。
不幸な自分の人生を、誰かのせいにしたかった。
そんなときに、魔導師の自己啓発本を読んで、そこに書かれた魔導師の詭弁に、憎しみが湧いた。
自分がこんなに苦労してるのに、魔導師は生まれつき魔導師というだけで、楽な人生を送っていると思うと。
憎くて憎くて、堪らなくなった。
そういうことなんだろう。
…気持ちは、分かる。
理解出来ない訳じゃない。
誰かを憎まなければ生きていけないほどに、追い詰められて苦しんでいる、この人の気持ちは…同情出来る。
魔導師が一般人にとって、そんな風に見られがちなのも分かる。
力を持たない彼らにとって、俺達はきっと、凄く贅沢に見えるのだろう。
金持ちには金持ちの苦労がある。でも金持ちの苦労なんて、貧乏人の苦労に比べれば楽なものだと。
そう言いたいのは分かる。
…けれど、一つだけ訂正したい。
「…全ての魔導師が、何の苦労もせず、幸せに暮らしてる訳じゃない」
さっきは、俺が君の人生を追体験したから。
今度は、君が俺の人生を追体験してきてくれないか。
そんな意地悪を考えてしまうほどに。
俺は、静かな怒りを込めて言った。
「力がある故に、死ぬほど追い詰められて…死ぬほど苦しんで…何千年も彷徨った者だっているんだ…」
恐ろしい魔物に取り憑かれ、人を殺すことを強要された。
大切な人を殺されて。故郷も家族も、自分の手で殺されて。脅されて。
脅されて、脅されて、脅されて…自分の意志を押し殺して、望まずに生きて。
「魔導師だって、君と同じ人間なんだ…。苦しみも、悲しみも、誰しも同じように感じてる…」
いっそ誰か自分を殺してくれと望みながら、でも誰一人、自分を殺せなくて。
だから命を奪った。何万、何億人を守る為に、何百人を殺して…。
罪悪感で押し潰されそうになりながら、それでも自殺することも出来なくて…。
君が魔導師を憎む気持ちは分かる。
でも、これだけは分かって欲しい。
「人間の力は平等じゃない。君が憎んでる通り…。でも、悲しみは平等だ。苦しみも痛みも、辛い気持ちを感じるその心は…誰しも皆、平等なんだよ」