神殺しのクロノスタシスⅣ
「そうかもしれない。お前の妹は、魔導師の気まぐれで見捨てられたのかもしれない」

「…」

「…でも、そのことと俺と、何の関係がある?」

俺があの少女を見殺しにした、その強欲な魔導師だというのなら、復讐されるのも分かる。

だが、少女が死んだことは、俺には全く関係のない話だ。

「復讐したいなら、お前の妹を助けなかった魔導師に復讐すれば良い。何故異界にいる俺を選んだ?」

「俺はあいつに復讐したいんじゃない。あいつ個人に復讐したところで、強欲な魔導師が一人、あの世に行くだけのことだ」

そうだな。

「お前は生贄だ。見せしめだ。全ての愚かな魔導師に対する警告なんだ」

「…」

「ご自慢の魔法が封じられたとき、魔導師という存在がどれほど無力か、全ての人に知らしめる。そういう意味では、お前である必要はなかった。強大な力を持つ魔導師なら、誰でも良かった」

成程。

聖魔騎士団魔導部隊大隊長クラスの魔導師であれば、誰でも良かったのか。

「そんなことをして、お前の妹は喜ぶのか?」

「さぁな。死人は何も語らない。ただ…このままじゃ、俺の気が済まない」

…。

…復讐者の理論だな。

堪えきれない怒りや憎しみを誰かにぶつけなければ、自分を保つことが出来ない。

その気持ちを否定するつもりはない。

「お前には同情する」

何処の魔導師が、金に目をくらませて、重病の患者を後回しにしたのかは知らないが。

その魔導師が公平な人物であったなら、このような騒ぎは起きなかった。

彼の妹も、今頃生きて、病院の外で普通に暮らしていたかもしれない。

そう思うと、彼の経験した理不尽には充分同情の余地がある。

…しかし。

「この世には、変えられない運命がある」

どんなに必死に願っても。

どれだけ復讐に焦がれても。

変えられない定めが、この世界にはある。
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