神殺しのクロノスタシスⅣ
早速、危険を一つ回避した俺達だったが。

結婚式は、まだまだ始まったばかり。

まだ新郎新婦が入場しただけだからな。

本番ここからだから。

祭壇では、牧師代わりのイレースが待っていた。

イレースは牧師ではないのだが、まぁ、代理だ。

それでも、法衣を着てると威厳を感じるから凄いよな。

誓いの言葉と言えば、式ごとに色々パターンはあると思うが。

今日の式にあたっての誓いの言葉は、割とシンプルだ。

むしろ王道の方が、小人も喜ぶだろうからな。

イレースは、にわか牧師として覚えた誓いの文句を、すらすらと口にした。

「新郎、ジュリスさん。あなたはベリクリーデさんを妻とし、健やかなるときも病めるときも、喜びのときも悲しみのときも、富めるときも貧しいときも、ベリクリーデさんを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」

よく噛まなかった。偉い。

愛することを誓うかと聞かれると、背中がこそばゆいような、もぞもぞした感じがするが…。

この場において、俺に自由に発言する権利はない。

答えは決まっている。

「はい、誓います」

死が二人を分かつまで、って奴だな。

そして。

「では、新婦、ベリクリーデさん、あなたはジュリスさんを夫とし、健やかなるときも病めるときも、喜びのときも悲しみのときも、富めるときも貧しいときも、ジュリスさんを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

イレースは、今度はベリクリーデに同じことを尋ねた。

しかし。

「うん、誓うよー」

軽い。

ノリが軽いぞ。

お前、結婚式の厳粛さを何処に忘れてきた。

式場にいる全員が、ガクン、と膝から崩れ落ちそうになっていた。

この馬鹿。ちゃんと、「誓います」って言えって言っただろ。

「誓います、だベリクリーデ。誓います」

俺は、コソッとベリクリーデに耳打ちした。

「…げほっ、げほん」

イレースが、わざとらしく咳払いをして、先程のベリクリーデの失言(?)をなかったことにし。

「…誓いますか?」

再度、威圧感を込めて問いかける。

怖っ。

「…誓います」

これには、ベリクリーデもまともに答えるしかない。

よし。

かなりの棒読みだったが、まぁセーフだ。
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