神殺しのクロノスタシスⅣ

…ってなことを、文章にして書き、こうして発表したのだが。

それを聞いた、俺以外の四人の反応は。

「そっかぁ…。羽久…そうだね…。平和が一番だよね…」

シルナは何故かちょっと涙ぐんで、うんうん頷いていた。

何だよ。感動したか？

まぁ、これは俺だけではなく、シルナの望みでもあるだろうからな。

誰でもそうだろう。平和を願う気持ちは同じだ。

そして、天音も。

「良い夢だね…。僕も、同じ気持ちだよ」

と、言ってくれた。

良い奴だな、天音…お前って奴は。

そう言ってもらえると、頑張って作文を書いた甲斐があっ、

「でも、それって将来の夢ではないですよね。要するに現状維持を望むってことでしょ？」

…。

「そうですね。私はもっと具体的な…改革を求めていたんですが。向上心の感じられない文章です」

…。

「これがもし、入学試験の小論文課題だったら、多分落ちてますよね」

「えぇ。意気込みも気概も感じられません」　

…ナジュとイレースが辛辣。

悪かったな。どうせ俺は落第生だよ。

良いんだよ俺は。教師なんだから。

「教師を名乗るなら、もっとこう…向上心を持つべきなのでは？」

将来の夢は？と聞かれて、真っ先に「死ぬことです！」って答えた奴に、向上心の有無を問われるとは。

笑いが止まらないな。

「どうせ俺の夢はつまんないよ。悪かったな」

ちょっと不貞腐れてそう言うと、天音が、

「そ、そんな。つまらないなんてことはないよ。皆が笑顔で、幸せであるように…凄く大切なことだと思うよ」

全力でフォローを入れてくれた。

本当に良い奴だよなぁ、天音。

天音だったら、もうどんなつまらない文章を書いても褒めてくれそう。

「将来の夢なんてないので、将来の夢を見つけるのが将来の夢です」とか書いても、褒めてくれそうだもん。

これでも結構考えて書いたんだから、俺としてはこれで及第点だよ。

それに、偽らざる俺の本音でもあるしな。

「それで？俺にそんなことを言うナジュやイレースは、大層な夢を持ってるんだろうな？」

と、俺は逆に聞いた。

二人共、俺の作文を酷評したのだから、それなりの文章を書いてるんだろうな？

でなきゃ、俺のことは責められないぞ。

「まぁ待ちなさい。順番はくじ引きです。次を引きますから」

そう言って、イレースは箱の中に手を突っ込んだ。

誰だろうな、次は。

すると。

「二番手は…天音さんですね」

「あ、僕か…」

ナジュでもイレースでもなかった。

天音か…。安心して聞いていられるな。

確か、生徒の健康増進が…とか言ってたよな。