神殺しのクロノスタシスⅣ
不憫な天音の発表を終え。

「次は三人目…あぁ、私ですね」

自分の名前を引くイレース。

ここでイレースか…。真打ち登場だな。

「では私の発表を」

と、言うなり。

イレースは、何処に隠していたのか、5枚どころではない原稿用紙の束を、ドサッ、と机の上に置いた。

な…何だあれ?

豆腐より分厚いんだけど?

「い、イレースちゃん?それ何…?」

「私の目標です。全て書いていたら、こうなりました」

まさか、本当に500枚書いたのか?なぁ。

あれは冗談のつもりだったんだが?

「全てを読んでいると日が暮れますね…。かいつまんで、要点だけを話すとしましょう」

よく書けたな、あんなに。一週間で。

授業のとき以外は、ずっと書いてたんじゃなかろうか。

「まず私の第一目標は…イーニシュフェルト魔導学院の大改革です」

恐ろしい将来の夢が来た。

シルナが危機を感じたのか、ビクッとしてる。

大改革なんか起きたら、真っ先に粛清されそうだもんな、お前。

「この風紀の乱れたイーニシュフェルト魔導学院を、規律を重んじ、厳格な生徒を育成する為の場とします」

「う、うん…?そ、それはどうやって行うの…?」

「まずは、学院長を粛清します」

「ひえっ」

軽い気持ちで聞いたら、自分が粛清されると言われて悲鳴をあげるシルナであった。

まぁ、そりゃそうなるよな。

「学院長のこの、ふざけた態度こそが、イーニシュフェルト魔導学院の風紀の乱れの元凶です。即刻学院長をクビにするか、あるいは学院長をせんの、いえ、再教育することで、意識を大きく改めてもらう必要があります」

今洗脳って言いかけなかった?

「それから、そこの色ボケ教師を学院から叩き出し」

「え?僕クビですか?」

「そこの、保健室の甘ちゃん教師も再教育します」

「ぼ、僕…甘ちゃん教師…?」

ナジュと天音までもが、粛清対象。

俺は名前呼ばれなかったんだけど、俺は危機回避したってことで良いだろうか。

「そして当然、羽久さんにも意識改革をしてもらいます」

逃れられなかった。

そうか…。そういうさだめか…。

洗脳じゃなく、再教育だからまだ良しとしよう。

良くはないけどな。

「教員が変わることによって校風が変わり、校風が変われば生徒も変わります。こうすることで、イーニシュフェルト魔導学院を厳格な学校へと作り変えます」

恐ろしい。

シルナが、何やら想像したらしく、ガクガク震えていた。

お前は再教育しても無理そうだから、クビだろうなぁ。

「まずはその先駆けとして、来年度から、学院長の忌々しい菓子代を、全額カットします」

「ひょえっ!?」

シルナ、大ピンチ。
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