神殺しのクロノスタシスⅣ
「…すぐりはどうやって知ったんだ?」

「聞こえたから。路地裏で『サンクチュアリ』のメンバーらしい人が、通りすがる人掴まえて、新聞配ってたんだよ〜」

そんな雑な配り方してんの?

でも、不特定多数に配るには、有効な手段なのかも。

号外だって、割と配り方雑だもんな。「号外号外〜!」って言ってたら、人群がってくるし。

『サンクチュアリ』の場合は、キャッチセールスと言うか、ティッシュ配りのノリで配ってるらしい。

それを偶然目撃した、ってことか。

「よくそんな、ピンポイントで見つけられたな…」

運良く見つけられたから、良かったようなものの。

下手したら、上手く『サンクチュアリ』の新聞配布に鉢合わせするまで、路地裏を転々としなきゃならなかったところだ。

しかし。

「別に。俺は聞いてただけだよ?」

…聞いてた?

さっきからすぐりは、「見た」じゃなくて、「聞いた」という表現を使っている。

どういうことなんだ?聞いたって。

「何処で聞いた?」

聞き込みでもして回ったのか?

しかし。

この二人の行動は、俺の予想を遥かに越えていた。

「糸で」

「糸?」

「夜の路地裏は、色んな情報の溜まり場だからね〜。しこたま糸を張り巡らせて、糸電話の要領で人の声を集めるんだよ」

と。

ここに来て、すぐりの謎の特技が披露された。

…マジで?

そんなこと出来るの?お前。

「その中から、『サンクチュアリ』関連の話題を見つけて、それが聞こえた糸を手繰っていったら、いたよ。『サンクチュアリ』の人」

「…!まさか、接触はしてないよな?」

奴らは、魔導師排斥論者の集まり。

そしてすぐりは、まだ子供だが、しかし立派な魔導師であることには変わりない。

『サンクチュアリ』は、王都に居を構え、各地に点在している魔導師排斥運動を活発化させ。

南方都市シャネオンでは、一人の男性を、小学校や駅の爆破を決行するにまで至らせた、控えめに言っても危険な集団だ。

いくらすぐりが子供と言えども、そんな危険集団のメンバーと接触したら、何をされるか分からな、

「え?殺した方が良かった?」

違う。逆。

お前の身を心配してたんだよ。

「大丈夫ですよ、羽久さん。いくら危険思想の持ち主だろうと、素人の人間相手に、すぐりさんが負けると思います?」

と、俺の心を読んだナジュが言った。

まぁ…そうだけどさ…。

月の光さえ届かない、暗い夜の路地裏という、令月やすぐりにとっては、ホームスタジアムとも言える環境で。

しかも、令月も近くにいたんだろうし。

そんな状況で、この二人を相手にしなければならないなら、俺だって逃げることを考える。

そういう意味では、大丈夫なのかもしれないが。

それでも危険行為であることに変わりはない。
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