神殺しのクロノスタシスⅣ
「こんなものを発行し、聖魔騎士団にバレたら…って、実際バレてますけど。下手したら『サンクチュアリ』という組織そのものが危うくなる…のに」

ナジュは、シルナの方を向き。

「何で、敢えてこんな危険な真似をするんでしょう。聖魔騎士団が怖くないんでしょうか?…ねぇ、シルナ学院長」

…何で、シルナ?

「…ナジュ君…」

「さっきからあなたが危惧してること、皆に言ったらどうです?どうせ、僕にはバレてるんですし」

「…はぁ…」

シルナは、苦笑いで溜め息をついた。

シルナが危惧してることって…。

「君には敵わないなぁ、ナジュ君…」

「頑張って隠そうとしてましたが、無理ですよ。僕の読心魔法の前には」

「シルナお前、何を隠してんだよ?」

俺は、シルナを詰問せずにはいられなかった。

お前はまた、何か重いものを一人で背負おうとして。

無理してるんじゃないだろうな?絶対許さんぞ、そんなこと。

「分かった分かった、話す、話すから」

「さっさと言え」

「はいはい。あのね…さっきもナジュ君が言ってたように、『サンクチュアリ』が半ば革命を起こそうとしている…なんてことを知られたら、当然聖魔騎士団に目をつけられるでしょう?」

そうだな。

「それなのに、敢えてこんな新聞を発行している。つまり、万が一新聞が聖魔騎士団の手に渡っても、怖くない理由があるんじゃないか、って思ったんだ」

…。

「怖くない理由…?」

「そう。こんな大胆なことをするのは、きっと聖魔騎士団に見つかっても良い…。目をつけられても、逃げ切る自信があるのか、免罪符を持ってるのか…」

「何かしら、聖魔騎士団の追及を躱せる、秘策があるかもしれないってことか…」

「そういうこと」

それは…確かに。

そうでもなきゃ、こんな大胆な真似は出来ないだろう。

「その秘策の中身が、私としては気になるところだよ…。聖魔騎士団を黙らせ、魔導師排斥運動をのさばらせておく、それこそ魔法みたいな方法を…非魔導師の集団である『サンクチュアリ』が持っているのかと思うと…どうも引っ掛かる」

「…」

一体、どんな方法なんだろうな。

…まるで見当がつかないが。
< 89 / 795 >

この作品をシェア

pagetop