陰謀のための結婚

「お母さんが心配する。今日の夕食は家で食べなよ」

「え? ここで?」

 驚きの声を上げると、智史さんは目を丸くして、それから笑った。

「ここにいてほしいのは山々だけど、今の流れ的に、家は香澄ちゃん家でしょう。帰りたくないのがバレバレだよ」

「そ、そういうわけじゃ」

 熱くなるのを感じて、顔を伏せる。

「あー、本当、クールそうな美人のポンコツ発言にグッと来るなんて、自分でも知らなかったなあ」

「放っておいてください」

「なに? 自分で美人って認めるの?」

 ニヤニヤしている彼にますます顔が熱くなり、「智史さんなんて嫌いです」と言って顔を横に背けた。

「俺は好きだけどね」

 穏やかな声色に、胸がトクンと音を立てる。

 狡いよ。サラッと言って。

 彼には勝てる気がしない。完敗した思いで、帰る支度を始めた。
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